ものづくり補助金の事業計画書を作るとき、ポイントは「分かりやすさ」と「企画のクオリティ」です。
数字や図表をうまく使って、どうやって収益を上げるのかをシンプルに伝えること、そして源泉が税金である「補助金」を使うに値する企画であるかを伝えること、これらが大切です。
そんな補助金の審査をするのは、様々な背景を持つ専門家たちです。彼らはビジネスを全て知り尽くしているわけではありません。人によっては業界知識がゼロの方もいるでしょう。
だからこそ、補助金のルールに則った上で、補助金に込められた政策立案者の思いにうまく応える内容を練り込むことが必須です。
そこで、この記事では、採択を勝ち取るための事業計画書の書き方のコツをお伝えします。
このような疑問をお持ちの方は、本記事を参考にしてみてください。
\補助金でお困りの方は一度ご相談ください!/
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金は主に、中小企業の設備投資の一部に補助金を出す制度です。
補助金を利用した設備投資が、下記のどれかに使われる必要があります。
売上を伸ばし、従業員の賃金を引き上げていく計画を作れる中小企業であれば、申請が可能です。
ほとんどの方が申請する『通常枠』という区分では、設備投資の対象経費が1/2~2/3の割合で、最大1,250万円がもらえます。
なお、上記は16次締切時点の情報です。
申請しやすいものづくり補助金の種類
ものづくり補助金には、いろいろな申請枠がありますが、
これらを考慮した上で、一番申請しやすいオススメの枠は次の2つです。
以下では、この2つについて解説していきますが、まずはその前に、ものづくり補助金に共通している条件(基本要件)について解説します。
共通の条件(基本要件)
ものづくり補助金に共通して求められる条件としては、以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定することが必要です。
これが、ものづくり補助金に共通している基本要件となります。
これらを満たした上で、各申請枠ごとの条件も満たす必要があります。
それでは、先ほど紹介したオススメの枠について、見ていきましょう。
1)通常枠
通常枠については、その設備投資が「製品またはサービス開発」「試作品開発」「生産プロセスの改善」のどれかに使われること、という条件を満たせば申請可能です。
通常枠以外の枠については、例えば、下記のような資料が求められます。資料を集める難易度が非常に高くなります。
特に製造業者が新しい機材や設備の導入を考えている場合、通常の補助金枠を選択するのが最も手軽で効果的だといえるでしょう。
2)デジタル枠
デジタルを活用して業務効率化を行う場合や、他社のデジタル変革をサポートする製品やサービスの開発を行う事業の場合、デジタル枠での申請がオススメです。
この特別な枠は、国の政策に即した取組を実施することになるので、通常の補助金枠よりも採択率が優遇されている点が魅力です。
補助金額の上限は1,250万円ですので、通常枠と同じです。
一方で、補助率は固定で3分の2となっています。
特に製造業で従業員20名より多い企業にとっては、デジタル枠の利用が効果的です。
なぜなら、21名以上の場合、通常枠では補助率が2分の1に減少するため。
他の申請枠と違い、特に難易度の高い資料を追加提出する必要はないという点も、デジタル枠の魅力の1つです。
申請書や公募要領はどこで見れる?
補助金のコンサルタントである弊社はじめとする「専門家」がよく見ているWebページや、そのページの中でどこを見ているかという内容を紹介します。
公式ホームページ
まずは公式ホームページです。
補助金の最新情報をキャッチするためには、公式ホームページの「お知らせ」コーナーのチェックが欠かせません。
具体的には、新たな募集の開始や採択結果の公表が行われます。
さらに、締め切りの変更やその他の緊急な情報もタイムリーに掲載されるので、要チェックです。
多くの専門家は、この「お知らせ」欄を頼りに、最新の動向を掴んで、皆さんの補助金活用をサポートしています。
公募要領のWebページ
ものづくり補助金総合サイトのヘッダーメニューで、左から2番目のタブに「公募要領」のページがあります。
このページの中でチェックする箇所は4つあります。
順番に解説してきます。
「1.公募期間」
チェックする箇所の1つ目は「1.公募期間」です。
ここには最新の申請締め切り情報が記載されています。
16次公募については、令和5年11月7日までとなっています。
「2.公募要領等」
チェックする箇所の2つ目は「2.公募要領等」ですね。
公募要領は補助金申請の際のルールブックとなります。
計画書作成や必要書類の準備時には、こちらの内容を参照し、必要書類を集めてください。
公募要領には、下記のような内容が掲載されています。
ですので、我々が皆様の申請をサポートする際には、必ずこの公募要領に基づいて行なっています。
ちなみに、補助金は種類ごとに公募要領が異なります。
つまり、ものづくり補助金のルールと、その他の補助金のルールはそれぞれ異なるわけです。
そのため、補助金コンサルさんの中には、「ものづくり補助金は扱えますが、それ以外の補助金はサポートできません」という方もいらっしゃいます。
弊社であれば、初見の補助金であっても公募要領を読み解いていけるので、どのような補助金でも基本的には問題なくサポートできます。
「様式」
チェックする箇所の3つ目「様式」です。
ここには、提出が必要な資料が掲載されています。
「参考様式 事業計画書 記載項目」
チェックする箇所の4つ目は、「公募要領・よくあるご質問」の中の一番下にある「参考様式 事業計画書 記載項目」です。
これは、ものづくり補助金事務局が提供している、いわば「下書き」のようなものです。
この資料の中で「(5)具体的内容」を見ると下記の3点が記載されているので、どのような内容を計画書に記載するべきかを知ることができます。
以下では、この3点をどのように活かせばいいかを具体的に解説します。
計画書には何を書けば良いか?
それでは、計画書記載例をもとに、何を書けば良いか見ていきましょう。
ここでは、「もし私が、初めてものづくり補助金を申請するとしたら、どのように計画書を作るのか」という前提で、計画書の作り方を解説します。
ここで紹介している内容は、他の補助金を申請する際にも参考になると思います。
最大のポイントは「キーワードを拾って、適切に使用すること」です。
私は、以前公務員として働いていたのでよくわかるのですが、行政官庁というのは単語(キーワード)に特定の意味を持たせ、重要視します。
ですので、キーワードに込められた意図を読み取った上で、それを基にどのように文章を作成するか、どんな情報を取り入れるかを考慮することが求められます。
その1:補助事業の具体的取組内容
・本事業の目的・手段について、今までの自社での取組みの経緯・内容をはじめ、今回の補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性を示してください。また、課題を解決するため、不可欠な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等を明確にしながら、具体的な目標及びその具体的な達成手段を記載してください。事業期間内に投資する機械装置等の型番、取得時期や技術の導入時期についての詳細なスケジュールの記載が必要となります。
・事業計画と「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」又は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を説明
・本事業を行うことによって、どのように他者と差別化し競争力強化が実現するかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に説明
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/16th/参考様式_事業計画書記載項目_20230808.docxから引用
上記は、先ほど紹介したチェックする箇所の4つ目「その1:補助事業の具体的取組内容」に記載されている内容です。
上記の引用のうち、下線を引いているところがポイントです。
この下線部分のキーワードの意味を考えて、「目的主体」、「今までの自社の取り組み内容」などの情報を整理して、どう組み合わせたらいいか考えていきます。
ものづくり補助金の事業計画書には、ページ数に10ページ以内という制限があります。
この制限内で、自社の取り組みや目的を効果的に伝えるため、まず全ての情報を書き出してみることをおすすめします。
その後、必要な情報を絞り込み、読者にとって分かりやすいストーリー形式に編集することが大切です。
参考までに、上記の引用の中で出てきた「指針」や「ガイドライン」は下記のとおりです。
その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
・本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や現在の市場規模も踏まえて記載してください。
・本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について簡潔に記載してください。
・必要に応じて図表や写真等を用い、具体的かつ詳細に記載してください。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/16th/参考様式_事業計画書記載項目_20230808.docxから引用
こちらについても、単語を拾って書き出していきます。
さて、ここでも「行政あるある」を1つ紹介しましょう。
補助金の申請時、「必要に応じて図表や写真等を用いる」との記載がある場合がよくあります。
一見、任意で使用しなくても良さそうに感じますが、この表現は実際には「図表や写真を使った方がいいですよ」という意味合いが隠されていたりします。
したがって、補助金の申請書類作成時には、図表や写真をほぼ必ず使用した方が良いです。
その3:会社全体の事業計画
・会社全体の事業計画(表)における「付加価値額」や「給与支給総額」等について、数字の算出根拠(実現の道筋)を明記してください。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/16th/参考様式_事業計画書記載項目_20230808.docxから引用
これについては、下記のような内容を記載するようにしましょう。
採択される計画書をつくるチェックポイント
ここまでは、補助金の計画書作成において、審査員の評価を得るためのポイントを解説してきました。
しかし、実際のところ、具体的な内容の深堀りや「どこまで作り込めばいいのか」についてわからない方が多いと思われます。
実は、どこまで作り込めばいいのかについては、公表されている情報が存在します。
公募要領P33の「10.審査項目・加点項目」セクションには、審査員が計画書を評価する際の基準が公開されているのです。
これを参照することで、採択率を大幅に高めるヒントを得ることが可能です。
これまでのステップとして、
これらを紹介してきましたが、さらに、
この手順を踏むことで、計画書の採択確率は大きく向上します。
さて、審査項目は多岐にわたりますが、特に焦点を当てるべきポイントについて、以下に簡潔にまとめてみました。
(1)補助対象事業としての適格性
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
最低限この条件を満たしてないとそもそも申請できませんので、必ず達成していることを確認してください。
(2)技術面
ものづくり補助金は、新製品やサービスの開発、業務の効率化、試作品の開発などを目的として提供される補助金です。
申請の際には、これらの技術的な課題と設備投資との関連性を明確に示す文書が必要となります。
(3)事業化面
これは「ビジネスとしてうまく軌道に乗せられそうか」という点を説明する部分となります。
補助金を活用するためには、まず企業の安定性や適性を示す必要があります。
さらに、プロジェクトが実施された際の売上や成功の見込みを具体的なデータで示すことが求められます。
これらが、その根拠となります。
さらに、事業スケジュールや費用対効果を明確にすることで、費用対効果の高いプロジェクトであることをアピールすると良いでしょう。
例えば、
この2つでは、当然ですが後者の方が費用対効果がが高いと評価されます。
(4)政策面
そもそも補助金は、国民の税金を基に作られた制度であり、日本全体の大きな課題を解決するためのものです。
「ものづくり補助金」では、上記4つを重視しているので、これらの要件を多く満たす計画書は、政策的観点から非常に優れているとみなされます。
そのため、これら4つの政策面にどのように貢献できるか、具体的な取り組みやアイディアをしっかりと考慮することが申請の成功への鍵となります。
チェックポイントの総括
ここまで、採択率をアップするためのチェックポイントを4つ紹介しました。
これらのうち、第1の要件は必ず満たすべきですが、2番目から4番目の要件は全てを満たす必要はありません。
もちろん、すべての要件をクリアするのは理想的ですが、それが必須ではありません。
例として、業務効率化を目的とする場合、新製品や新サービスの開発要件を満たすことができないかもしれません。
しかし、これが満たせないからと言って、補助金の申請が不可能なわけではありません。
業務効率化のプロジェクトは、その点においてのみ評価されないだけですので、採択を受けることは可能です。
弊社は、この辺りの申請に関するさまざまなノウハウやテクニックにも詳しいので、もしご質問や不安があれば、お気軽にお問い合わせください。
申請に必要な添付書類一覧とその注意点
以下では、必要な添付書類ごとの注意点を解説します。
事業計画書
賃金引上げ計画の誓約書
決算書等
従業員数の確認資料
労働者名簿
採択率をさらに上げる方法
ここまで紹介してきた手順で計画書を作成していれば、採択率はかなり高いものができていると思います。
しかし、倍率の高い公募ではそれでも不採択となる場合もあるでしょう。
そのような場合の備えとして、採択率を一段と向上させる秘訣があります。
それは、「加点資料」の活用です。
様々な加点資料が存在し、それぞれの取得難易度は異なります。
その中から、比較的簡単に取得できるものが、次の3つです。
これらの加点資料を利用することで、採択率をさらに高めることができます。
既に持っている方はそのままお使いいただけますし、もしこれから取得される場合でも、弊社では1ヶ月あればサポートできるので、十分間に合います。
これらの詳細について知りたい方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。
効率よく補助金をもらうための方法
多くの方が、補助金の申請スケジュールについて、「どれくらいの時間が必要か?」と疑問を持っておられるようです。
弊社の経験に基づき、多くのクライアントがどのようにスケジュールを組んでいるのかの実例をこちらで紹介します。
- 手順1補助金なしでも黒字が達成できる企画づくり(1ヶ月~)
約1ヶ月をかけて、まずは企画固めてから、補助金申請を検討していきます。
- 手順2要件確認を行い、補助金申請を決意する(1週間)
企画が作れたら、申請できるの要件確認をします。
要件確認が済み、スケジュールを引ければ、この計画通りに補助金を使ってプロジェクトを進めるという決意をしていただきます。
- 手順3申請に必要な書類を集める(1ヶ月)
- 手順4計画書を作成する(1ヶ月)
- 手順5電子申請する(3時間)
計画書の作成時間は約70時間
ものづくり補助金公式サイトのデータによれば、事業計画書の作成に「70時間以内」を費やした申請者の採択率が56.9%と、最も高くなっています。
このデータには、2つの見方があります。
事業計画書の作成に70時間近くを費やしているということは、実際には社長自身がゼロから書き上げる場合、かなりの労力が必要です。
たとえ資料作成が得意な方でも、最低50時間以上の取り組みが予想されます。
そんな中、時間が取れない、本業で手が回らないからできないと感じる方は、弊社のような専門家に依頼するのも一つの選択肢です。
弊社は、そのような負担を軽減し、効果的な申請書のサポートを提供いたします。
まとめ:一番大変な作業は成功確率の高い企画を作ること
採択を勝ち取るための鍵は、事業計画書よりも、初期段階の企画立案にあります。
黒字化が見込めそうなクオリティの高い企画があれば、自然と採択の確率も向上します。
事業計画書は、その高クオリティな企画を最適に伝えるツールです。
見せ方を工夫することはできますが、もともとの企画自体が不十分であれば、その価値は半減します。
腐った食材で美味しい料理を作ることが難しいのと同じで、採択のためには質の良い企画が必要です。
このように考えると、経営者は企画のクオリティを高めることに時間を費やし、事業計画書の作成支援や叩き台づくりは、補助金の専門家に委ねるのが賢明と言えますね。